採用活動
出演者
北海道大学 東京オフィス所長・特任教授
山田 澤明 様
学生A
学生B
株式会社ワークス・ジャパン
ファシリテーター
簑原 誠
株式会社ワークス・ジャパン
司会
中島 光一
学生の企業選びのポイントが大きく変化している
- 簑原
- これからトークセッションを始めます。弊社で集計している23卒学生に対するアンケート結果では、大学3年生の時期から動き出している学生さんが非常に多いことがわかりました。次に学生さんが「就職活動中に困ったこと」ですが、オンラインが前提のため情報収集がしにくい、社風や仕事のイメージがなかなかつかめず志望企業を絞り込むのに苦戦している、といった声があがっています。
- 山田
- 就職活動は早期化していて、インターンシップを早いうちからみんな受けています。ただ、最終決定の時期はそんなに変わらないので、結局、長期間就活をしているという状況です。内定をもらっていても後で悩むといったケースも多いと思います。
- 簑原
- この点について、23卒学生と24卒学生の違いはありますか。
- 山田
- 年々、早期化が進んでいて、24卒はさらに早期化することになります。産業構造が大きく変わり、企業さんもいろんなタイプの学生を採用しようとしています。今までのように決まった学科の学生を採用するということではなくなってきました。学生も安定しているから大企業がいい、という選び方をもうしていません。ベンチャーにもコンサルにも関心があるし、外資系も選択肢にある。また、大企業もいつまで大企業のままいられるか、実はわからない。世の中の変化について、企業の人より学生の方が敏感な気がします。
- 簑原
- 今の学生さんは、どこにポイントを置いて企業を選んでいるのでしょうか。
- 山田
- まず、相当幅広い業種で考えています。ちょっと目端が利く学生ほど、就職する業種・企業をすごく幅広に考えて積極的に情報を集めています。先輩訪問アプリみたいなものを使っていろんな企業の現場の社員さんに話を聞きに行く、といったこともしています。
- 簑原
- 山田先生としては、そうした学生の傾向も踏まえて、どういった観点で学生さんに企業の選び方や就活の進め方について、お話をされているのでしょう。
- 山田
- まず、幅広く見ましょうと。それから、企業文化や成長性、国際性をポイントにして考えようと伝えています。成長性と国際性は関連があって、日本の経済成長率より、世界の経済成長率のほうが高い。昔と違って今は国内だけを相手にしていると成長できません。海外の市場あるいは国際競争力はあるのか、というところを考えた方がいい、と学生には言っています。
- 中島
- 業界で絞るという考え方は、傾向として少なくなっていて、企業様からも「バッティング先が同業界ではなくなった」という話をよく聞きます。
- 山田
- 企業側もただ「優秀な人を採用したい」というだけではなく、本質的にその会社の競争力は何か、存在価値は何か、国際競争力はどこにあるか、という点を考え抜いて、学生に説明することが必要でしょう。日々の仕事に追われて、深く考えていなかったり、うまく伝えられていなかったりするところがあると思います。また、現場の社員さんとの接触の機会を作ってあげて、現場の社員さんが何を考えているのか、何を面白がっているのか、ということを伝えていただきたい。それがあると学生も納得感が得られると思います。
就活の開始時期は早くなり活動期間が長期化している
- 簑原
- ではこの後、24卒学生のお二人に登場していただき、生の声をお届けしたいと思います。学生Aさんは、理系・大学院の1年生です。学生Bさんは、国立大学の文系・3年生です。就職活動を意識されて動いたのは、いつ頃からですか。
- 学生A
- 私の場合は、大学院への進学を前提に、その後のことを考えて、学部4年の卒業論文を書き終えたタイミングで、大体2月の頭ぐらいから就職活動を意識し始めました。研究室の一つ上の学年の先輩が、外資系への就職を視野に活動されていて、それを去年見ていて、早い時期から就職活動しないといけないのかなっていう“謎の危機感”みたいなものがあり、僕も卒論が終わったタイミングで始めてみようかなと考えました。
- 学生B
- 自分は2年生の1月頃に始めました。就活について調べていると、先ほどお話にあった早期化の話もあり、全員ではありませんが、周囲に活動を始めた人もいたので、自分も始めました。
- 簑原
- 山田先生、やはり活動開始の時期が早いなという印象ですね。
- 山田
- そうですね、いわゆる就活時期のガイドラインも残ってはいますが、インターンシップがすごく広まったことが、すごく影響を与えていると思います。それこそ大学1・2年生でもインターンシップなら参加できますし、コロナ禍を契機にリモートでインターンシップに参加して、その企業を知るという形も生まれました。リモートも早期化の要因の一つになったかなと思います。
- 簑原
- 現在の活動状況について教えていただけますか。
- 学生A
- 私はいろんな企業のサマーインターンシップを見据えて、その選考のエントリーや初期の選考過程の対策に取り組んでいます。自分の身になるなとか、何かの役に立つなとか、やりがいを感じられる職に就きたいと考えています。業界はあまり絞らず、今は自分が何に適性があるのか、何がやりたいのか、というところを見極めたいという段階です。
- 中島
- サマーインターンシップの企業を選ぶにあたり、どういう形で情報収集していますか。
- 学生A
- 私の場合は、一つ上の先輩から聞いたり、大学院の同期の仲間の情報や就活サイトで流れてくる情報を参考にしたりしています。
- 学生B
- メインは就活情報のサイトです。いわゆる選考Hackみたいな部分も載っています。対策セミナーにも参加していて、そこで入手した情報をもとに就活を進めています。
学生は若手のうちからチャレンジでき自身が成長できる環境を求めている
- 簑原
- 企業選びの基準についてですが、企業のここに着目しているとか、具体的に教えていただけますか。
- 学生A
- スケール感の大きい事業をしている企業に魅力を感じています。挑戦というところを大事にしていて、ちょっと自分にとって困難だなと思えることも最初のうちからバンバン何かタスクとして与えられるような、少し厳しい環境の方が僕はいいなと思っています。そういうチャレンジングなことをやる会社で働きたい。
- 中島
- ネームバリューとか、業界とか、そういったところはほとんど関係ない感じですか。
- 学生A
- 全くないとまでは言えませんが、その企業の事業について、自分がワクワクできるか、というところをより大事にして見ています。
- 学生B
- 私は10年後に何かの事業の作り手になりたいと思っているので、自分の就活の軸として、「10年後までにしっかり成長できる企業」を大きな軸としていて、戦略コンサルを視野に入れています。その中で「人」「社会についてよく知ることができる」「志しの高さ」をポイントにしています。
- 簑原
- 山田先生、今学生AさんもBさんも、チャレンジング、成長したい、その辺りの意欲が強いようですが、実際今の学生さんはそういう傾向ですか。
- 山田
- そういう人もかなり増えていると思います。就職について一生そこの会社にいるとは思っていない。少なくも外資系の戦略コンサルは半減期3年と言われていて、辞めることが前提です。日系に勤める普通の学生も、新卒の就職はステップアップの一つだという認識を持つ人もでてきました。ステップアップや変化を前提に、その中の最初のステップとしてどこがいいか、という選び方をしている人が昔よりはずっと増えていると思います。
仕事内容や社員の人柄、社風が感じられるインターンシップのあり方に期待感
- 簑原
- インターンシップについてですが、既に参加されていますか。
- 学生A
- まだ参加はしていませんが、サマーインターンシップの申し込みを徐々にしているところです。10社くらいエントリーしています。その会社の実際の業務を知りたい。あとは社員さんと接して、そこで働いている方がどんな雰囲気なのかを掴み、今後、本選考に進むか進まないかを判断したいと思っています。
- 学生B
- 参加することが決まっている企業はありますが、実際の参加はまだです。Aさんと同じで、その企業の人の雰囲気は自分が大事にしている部分なので、そこを確認したい。また、サマーインターンシップに参加すると、今後の本選考で役立つという話も聞くので、そういう意味でも大事にしています。
- 簑原
- オンラインよりは、直接話したいという思いはありますか。
- 学生B
- 面接ではオンラインでお話を伺うこともありますが、インターンシップに関しては対面で参加したいという思いは強くあります。
- 学生A
- 僕も全く同じ意見です。
- 山田
- 企業も対面でないと人がよくわからない、と考えています。インターンシップも採用活動に組み込まれていて、1週間仕事をしてもらって、最後にプレゼンをしてもらう。そこで採用したいと思う学生がいれば、積極的に勧誘するということはあると思います。とくに外資系には、何の縛りもないので、どんどん内定を出します。ただ、別にインターンシップに参加できなくても、本選考で採用されるケースはあります。インターンシップは人数の枠が少ないので、参加できなくても気にする必要はなく、企業側もそのようなスタンスでいると思います。
- 簑原
- 学生Bさんは、戦略コンサルを志望されているということですが、夏のインターンシップに関しては、もうその業界を重点的に見るということですか。
- 学生B
- 今の時点で興味のない業界を全く受けないわけではないのですが、選考に通った後で行けるインターンシップは限られていますし、あまりエントリーし過ぎるとスケジュール的に結構厳しい。ある程度絞って臨みたいと考えています。
- 簑原
- プログラムや開催の日数とかで気にするポイントはありますか。
- 学生B
- 中身として本質的かどうか、また面白そうかということは気にしています。例えば、1日だけ3時間オンラインでやるものと、3日間対面でみっちりやるものを比べれば、やはり後者の方が面白そうです。企業の人のことも知ることができそうですし、参加する意味があると思います。
- 学生A
- 学生Bさんと同じ意見で、対面でしっかりとその社員の方々の感じがわかるようなインターンシップに参加してみたいと思います。
- 簑原
- 山田先生、お二方ともかなり優秀ということもあって、複数の日程でかつ本質的なところを知りたいという目的で参加されるようですが、24卒でもそういった目的で参加する学生さんは多いようですか。
- 山田
- 多いと思います。少なくとも外資系コミュニティみたいなところは、もう早期に先輩から話が来るし、企業側からもいろんなアプローチがあるでしょう。ただ、普通の学生さんは1dayでのインターンシップもたくさん参加しているし、企業側も1dayだと設定しやすい。いろいろなやり方があると思います。学生にいろんな形で会社を知る機会を作ってほしいなと思います。リモートで開催するインターンシップもあるので、そういうものに参加するのもOKで、たくさんの企業を知ることができますよね。
3回会うと親しみが湧く社員と会って話す機会が重要
- 中島
- インターンシップでの選考に合格できなかった場合、企業への志望度は変化するものでしょうか。
- 学生B
- それだけで志望度が変わるわけではありませんが、学生側がしっかり準備していることについて、あまり評価していただけなかったと感じる場合には、志望度が落ちることはあるかもしれません。
- 山田
- 企業側も見られているわけです。採用活動の選考は上下関係ではありません。企業もまた学生から選ばれている。きちんと対等の立場で話をするスタンスがないと、学生に見透かされると思います。
- 学生A
- 僕はまだ面接の経験もないのですが、選考に落ちれば気分はよくないでしょう。その後、本選考にエントリーするかに影響すると思います。
- 簑原
- 学生と企業は対等というキーワードが出ました。インターンシップ参加後の学生とのコミュニケーション、フォローについて企業側に求めることはありますか。
- 山田
- リモート中心になってワンデーとか、いろんなインターンシップを受けている学生がいますが、企業の価値観や企業文化などを感じる機会は少ないと思います。人事の採用担当者だけではなく、現場の社員さんが何を考えていて、何が面白くて、何が大変でやっているのかという点を上手に伝えるとか、そういう声を学生さんに伝わるようにぜひ上手に工夫してほしい。その方がその会社の面白味とかも伝えられるのではないかと思います。名刺交換するだけの人は世の中に多数いますが、3回会う人は極端に減ります。3回会うと親しみが湧き、よい関係ができるものです。3回ぐらいは少なくとも社員さんと会う機会を作っていただきたい。また、そういう工夫をすると、内定後もしっかりフォローされていると思い学生の安心感も高まります。
学生の最終判断のポイントはどこにあるのか
- 簑原
- 視聴者の皆様からチャットでいただいた質問を取り上げます。
- 中島
- 学生の皆さん、先ほどナビサイトで情報収集されているとのことでしたが、SNSや口コミサイトの活用はされていますか、という質問です。
- 学生A
-
僕はあまり使っていませんが、他の学生は結構Twitterを利用しています。SNSを活用している人は多いという印象です。
- 学生B
- 参照した方がいいのかなと思う一方で、情報過多になっていてナビサイトを見るだけでも精一杯なところがあり、SNSはそこまで利用していません。
- 中島
- 次に国家公務員という選択肢について。例えばどんな情報が入ってきたら国家公務員の説明会やインターンシップに参加してみようと思いますか、という質問が省庁さんから届いています。
- 学生A
- 業務がわかりやすく書かれている文面は必要だと思います。また、選考過程がよくわからないので、いつまでにこれをやって、その後はこっちでしっかり連絡取ります、みたいな先の見える広告があると、手がつけやすくなるのかなと思います。
- 学生B
- 国家公務員は選考プロセスがわからないというか、結構違うというのは正直大きい。就活サイトでも、国家公務員系の募集をあまり見かけません。民間企業と揃えられる部分は揃えた方が、学生側からは選択肢に入れやすい。もう一つ、国家公務員の場合、仕事内容だけでなく、雰囲気的な部分がもうちょっと学生に伝わると、選びやすいかもしれません。
- 中島
- 次の質問です。社風と仕事内容で検討するとのことでしたが、企業を選ぶ際の最終的な判断は、社風よりも仕事内容なのでしょうか、という質問です。
- 学生B
- いわゆる組織の4Pで人・社風・仕事内容・福利厚生みたいな部分で、一番は「人」だと思っています。社風と仕事内容と比較した時に、社風の方が仕事内容に比べて自分は大事かなと思っています。
- 中島
- 山田先生から、学生の皆さんへのご質問はありますか。
- 山田
- お二人とも外資系志望が強いみたいですが、不安はありませんか。私は日系企業にいたので、外資系のことはよくわかりませんが。
- 学生B
- 流動性は高いという自覚はあって、正直、合わなかったら短期で辞めるかもしれません。一方で、ある程度年収が高かったり、そこで活動して自分が身に着けるスキル自体が付加価値になったりすると思っているので、そこまで不安は感じていません。
- 学生A
- 私もとりあえず今外資系は見ていますが、Bさんが言ったように外資系のいいところもありますし、一方で日本人として日本の利益になるようなことをやりたいという思いもあるので、当然、日系企業にも就職活動をしたいと思っています。
- 簑原
- 学生の皆様は、ここまでのご参加になります。本日はお忙しいところありがとうございました。
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