採用活動
オンライン

「オンライン選考 ~「見極め」と「魅力付け」のポイント~|LIXIL×ファーストリテイリング 」を開催しました。

出演者

 彦田 友弘 氏

株式会社LIXIL
Human Resources 日本人事担当
Recruitment Office 主査

彦田 友弘 氏

 森山 裕子 氏

株式会社ファーストリテイリング
人事部
新卒採用チーム

森山 裕子 氏

 阪 真以子

株式会社ワークス・ジャパン
人材ソリューション事業部
ITソリューション部
コンサルティング2課 課長

阪 真以子

阪
2022年採用に向けて、いよいよ選考プロセスやフォロー施策の検討が大詰めを迎えていますが、21卒で実施したオンライン面接や夏インターンシップの実践も踏まえ、対面でなくても学生さんに自社の魅力を伝え、いかにミスマッチのない採用を進めるか、ニューノーマル時代におけるオンライン選考の工夫についてお話を伺いできればと思います。それでは彦田さん、森山さん、よろしくお願いします。
森山 森山
よろしくお願いします。
彦田 彦田
お願いします。
阪
最初に、21採用の振り返りとして、オンラインに切り替えたものが多かったと思うのですが、その中で出てきた採用課題をお伺いできればと思います。LIXILさんはいかがですか?
彦田 彦田

2020年の課題として、一つはメーカーとしての根幹の部分のモノづくりが、やはりなかなか見せることができなかった点です。
また、機電・情報学部に関して、どこの企業さんも今、獲得にすごくご苦労されていると思うのですが、当社としてもなかなか思うように進んでいないということが課題であったと思っています。
阪
機電・情報に関しては、コロナにかかわらず、取り組まれている採用課題となりますか。
彦田 彦田
そうですね。コロナというわけではなく、私たちが手掛けている商品が、どんどんインターネットと繋がってきているというところもありまして、数年前からすごく強化しているポイントにはなっています。
阪
ありがとうございます。学生さんたちに伝えるということが、オンラインになったことによって、やりやすくなったところとやりにくくなっているところがそれぞれあるかと思います。22採用に向けての取り組みについて、後程、お伺いさせていただければと思いますが、ファーストリテイリングさんは、21採用はいかがでしたか?
森山 森山
21採用については、私たちも認知をどのようにしてもらうか、イメージをどう変えていくかを、マーケティングの観点からもいろいろと取り組んできました。その結果、徐々に採用する学生の質やフィット感は、上がってきているなと思いながらも、昨年、コロナの影響もあって全てオンラインに切り替わったことで、本質的な働き方や社風・価値観が、やはり、なかなか伝わりきらないまま内定まで進んでしまいました。そのため、内定後のフォローにすごく力を使わないといけなくなってしまったり、選考官からはなかなか見極めがしづらいという意見も出たり、しました。
オンラインになったことによって、広くリーチができるようになった点はメリット
でもありますが、逆に、言葉を選ばずに言うと、広くリーチでき、オンラインで参加ハードルが下がるからこそ、狙った人だけがくるのではなく、選考効率が下がってしまい、見極めが難しくなった点は課題だったと考えています。
阪
それを踏まえて、22採用のご計画について、LIXILさんとして取り組まれることはいかがでしょうか。
彦田 彦田
LIXILとして今、インターンシップを中心に手掛けています。デジタル人材の採用に向けて、AIハッカソンというかたちで、スペシフィック人材にアプローチをかけて、実際にはインターンシップを、オンラインにて3DAYSで実施しました。メディアに取り上げていただいたこともあって、非常により多くの方に周知できたと思います。

22採用計画について

阪
インターンシップを踏まえて、22採用のご計画は、もう固まってきましたか?
彦田 彦田
そうですね、大枠ではおよそ決まってきています。インターンシップから母集団をしっかり形成して、あとは事業部別に、例えば、私たちが手掛けている水回り事業だけのインターンシップを実施したのでは、なかなか伝わっていかないので、それぞれの事業でそれぞれの商品というような切り口で、今、インターンシップを開催しています。
阪
学生さんも、オンラインになったことによって参加のハードル自体は下がっていると思うので、情報提供をどれだけ幅を広げてできるかを、今、企業さんが取り組まれていらっしゃるかと思います。ファーストリテイリングさん、現在のご状況はいかがですか?
森山 森山
はい。弊社は、今もう22卒の、選考がもう始まってきています。
春夏から「グローバルフェローシップ」という、就活生だけではなく低学年の方にも広く認知していただくための取り組みを行い
、母集団を集めながら、本選考を10月から実施しています。主な注力点は3つあります。1つは、課題の「企業の認知」。知名度はありますが、働く場所として正しく理解してもらうことや、イメージを変えていくことが非常に難しいので、例えばWEB動画を通じて、どう変えていくか取り組んでいます。2つ目は選考の設計で、内定だけとりあえず出して、そのあとに口説いていくのではなく、出会いからまず内定を出すまでの過程の中で、いかに理解してもらうのかを考え、コミュニケーションを設計しています。3つ目に、見極めも難しくなってきているので、昨年、一昨年ぐらいからの取り組みとして、適性検査などの科学的な要素も見極めに盛り込んでいます。人の目だけではなく、分析にも注力しながら、どうしたら本当にうちにくる志向性や基礎能力のある方が効率よく進んでいただけるのか、を設計しています。
阪
本選考がすでに始まっている企業さんは、まだ多くはないかと思うのですが、インターンシップから学生さんが繋がるなという体感値があるのか。あと学生さんの温度感はいかがでしょうか? 仕上がってきている実感はお持ちですか?
森山 森山
去年よりも、かなり
コンテンツを充足させ、告知をするターゲット学生を少し変えてきたこともあって、「経営者ってどんな人か」、「世の中にいいことをするということはどんなことだろう」みたいな、本質的な理解がある程度醸成されたうえで、本選考にきてくれているなという実感
はあります。
阪
先日、インターンに参加された学生さんに対して現在の活動状況についてアンケートを取ったのですが、やはり業界研究が目的でインターンシップに参加されている方が多く、まだ個別の企業研究まではできていない、自己分析ができてないという回答が出ておりました。就業体験がオンラインだと、今までみたいにじっくり取り組めていない状況だと思うので、どこまで就活の意識を高められているのか。学生さんの中でも温度差があるのかなと思っています。
森山 森山
そうですね。うちの理解をしてくれて、志望度高くきてくれる方も一部いますが、一方で、時期もあってか、自分の人生や働くことを通じて何をしたいのかについては、そもそもまだ向き合えていない方も多いかなと思っています。

オンラインだからできる工場見学

阪
企業の認知・理解について、説明会で取り組まれているオンラインならではの工夫をお伺いできればと思います。LIXILさんでは、実際今までできていた工場見学ができなくなっているかと思うのですが、その辺りはどのように工夫されていますか?
彦田 彦田
選考の途中での工夫点は、基本的に接点をどれだけ持つのか、が大事であると思っています。オンラインになったことで、なかなか先輩社員とは会えないですし、いろんな方の話を聞くことができないので、選考に入る前段階で、「LIXILで働くってどういうことなのか」、「どんな先輩社員がいて、どういう知識をもとに、どういうアウトプットを出しているのか」がわかるように、まずは先輩社員との懇談会に参加していただいています。そこで「LIXILで働くってこういうことだ」「こういうことを目標にやられる方が多いのか」と理解したうえで選考に進んでください、とあえて面接の前に伝える場を設けています。

また、選考に進まれる方に対しては、個別でのリクルーターでフォローしています。ただ、1対1のフォローだと、そのペアがまったくマッチングしなかったら、魅力付けしてきたものが減ってしまうので、そこはチームでフォローするようなかたちで、複数対複数でのフォローをしてきました。

工場見学については、内定者向けのオンライン工場見学に切り替えました。オンラインでやってよかったことは、実際に、私たちが採用する学生が現場に行ったときに触る機械を、より近くで見ることができる点です。

また、1つの工場だけではなくて、今回は全国4工場で行いました。今までであれば1人1工場しか行けなかったので、それが4工場見られたことはよかったと思います。結果的に4工場見た方の満足度がやはり1番高かったと数値でも出ていたので、幅広く見せることの重要性を感じられました。これからは試行錯誤でもっと伝えるために、今、ドローンを使った工場見学なんかもスタートしていますので、デジタルを、こういう選考でも盛り込んでいくと、そもそもの情報系の学生に対してもアプローチできるのかなと思います。
阪
ドローンを使って工場の中を見せるのですか?
彦田 彦田
外から見に行って、中に入っていって、中の全体を俯瞰で見せて、そこから作業者がどういう作業をしているのかというのを近くまで行って見せる、というようなかたちにはなっているので、本来であれば入れないところまで自分が入って見ているような感覚になります。
阪
すごいですね。働く職場としての、工場の規模感、どれぐらいたくさんの人がそこに携わっているかというスケールに関しては、見せたいところでもありますし。それはとても面白い取り組みだと思います。技術系の採用を行う企業様だと、今年、工場に入れなくなったことによって、モノを見せられないと「技術力が伝わらないのではないか」というお話をよく伺うのですが、見せ方や先輩社員のお話を通じて、魅力を伝えているのですか?
彦田 彦田
映像を駆使することによって、より鮮明に見えるので、すごく伝わるなと思いました。また、今までの工場見学だと1人の人が、工場を案内する人としての位置付けで案内していたのが、複数の先輩社員が説明することによって、より明確に、よりリアルな仕事内容を伝えることができたと思います。
阪
単なる工場見学から、キャリアも考えられるような工場見学に変わっていくというのが、オンラインならではの強みということですね。ありがとうございます。

入り口と選考過程のコミュニケーションを強化する

阪
ユニクロやジーユーは学生さんの知名度が高く、店舗に行ったことは皆さんありますので、そこで働いている人の姿を見る機会が多いとは思うのですが、逆に、だからこそ生まれる、その働き方のイメージのギャップや、アパレルで働くことに対する認知に関して、何か課題感と取り組まれていることはありますか?
森山 森山
まだうまくいっていないところではあります。知っているからこそ、イメージができるからこそ、逆に小売りやアパレルは、そもそも就職先として外れてしまったり、結局、店舗配属というところがネックになって辞退されてしまったりする点は、ずっと課題だと思っています。そこで、今年は、入り口と選考過程でのコミュニケーションを強化しています。

1つ目の入口のところでは、媒体から小売りやアパレルで検索して探すみたいなことだと絞られてしまうので、今流行っているYouTubeやSNSなども含めて活用しています。そこでまずは入口を広く開けて、志望業界としてうちを望んでいない方にも、「実はこんなキャリアがあるんだ」とか、「ただ店舗で販売しているだけだと思っていたけれども、こんなに店長って経営の裁量を持って仕事ができるんだ」といったイメージを持ってもらえるコンテンツを作っています。

あとは出会って話す機会が少ないからこそ、自分たちのオウンドメディアや、ホームページを今期は改修していて、そこに正しく、キャリアの動画やインタビューを配信して、学生が必要な情報が取れるという、そういったプラットフォームをきちんと作っていくことに注力しています。

2つ目の選考フローについては、今までは一律にフローを踏ませながら、内定を出した後に、一生懸命口説くことをやっていたのですが、今回は、学生の能力や志望度、志向性によって、少しフローを変えていくということをしています。

例えば、人事で面接をしたあとで、今までであれば最終面接にストンと行かせていたところも、「ちょっと怪しいぞ」、「もっと理解をさせたほうがいい」みたいなことであれば、途中でリクルーター面談を挟んだりしています。また、「キャリアセッション」という、キャリアの理解をもっと深めさせる機会を、選考の途中に入れています。これは選考と関係ないステップですが、ただキャリアを紹介するだけではなくて、「なぜうちの会社で働きたいと思っているのか」、「何を成し遂げたいからうちの会社なのか」、といったことを、自分の価値観との照らし合わせを再度させて、内定を出したあとにうちを選ぶ理由を明確にしてもらうことに、今期は注力したいなと思っています。

企業・事業理解を促進させる工夫

阪
ファーストリテイリングさんはグループ採用をされていて、各ブランドの働き方や役割について、今年は説明会の種類を増やして取り組んでいるかと思うのですが、そこは特に注力して取り組んでいますか?
森山 森山
前年までであれば、「説明会を1人1回参加していただければ選考に行けますよ」というかたちでしたが、今期は、説明会などオーソドックスな説明に関しては、アーカイブですべてまとめています。その代わり、各ブランドの機能、特色な、それぞれに関わっている人のリアルな声だったり働き方だったりというのを、コンテンツベースで、何回でも参加していいよという仕立てに変えました。そうすることで、面接に進む前にでも、面接中にでも、より理解を醸成させながら進んでいくことができるような設計にはなっているかなと思います。
阪
いつでも参加できる説明会を、コンセプトをもって開催していくということは、オンラインのメリットを最大限に活かしたものですね。
一方で、オンラインだと、よくも悪くも一緒に参加した人が見えない分、自分の関心や理解度で、いつでも参加できるということはすごく新しいなと思います。誰が登壇しても同じ内容の説明会になるし、人と体力を使わないっていうところも、すごく面白いなと思います。
森山 森山
たとえば、選考途中の方には、「もっと人事の話を聞きたいな」という方もいるので、そういう方には座談会の仕立てで、より親密性をテーマにしたもので何回でも参加していいよ、と。人やフェーズによって出し分けをしていくところも意識しています。
阪
面白いですね。
彦田 彦田
ちなみにどれぐらいの方が何コンテンツ見たのかわかるのですか?

森山 森山
10月から始めていることなので、今までで、4~5回ぐらいはやっているのですが、全部参加している人も一部いますね。
阪
面白いコンテンツですよね。経営者の方が経営を語るセッションがあったり、現場の社員さんが現場からどう育てていくかを話されていたり。例えばファーストリテイリングさんの中でも、ユニクロがどうとか、ブランド別の話がありますし、いろんな発展形があるなと思います。
森山 森山
先週で言うと、海外の元CEOの方をお呼びして対談形式でやってみました。WEBならではというか、会場設営もいらないじゃないですか(笑)。なので、チャレンジしやすいのではないかなと思っています。

専攻と配属のマッチング

阪
事業理解や自分の配属にも繋がっていくような希望の掘り下げというところでは、LIXILさんですと、特に技術系の方は、ご自身の専攻分野と事業分野をどう掛け合わせるかという話があるかと思うのですが、その辺の課題感と取り組みとしてはいかがでしょうか。
彦田 彦田
そうですね、これがすごく難しいところでして。「機械を専攻していたので、生産技術」、「化学だったので、研究がやりたいです」と言われる方が非常に多いのですが、椅子はそんなにあるわけではないので、面接の評価や、筆記試験の評価、ご自身の希望を聞きながら配属をしています。そこをどうイメージさせるかというと、先輩社員との対話になるかと思っています。

今年はコロナの影響もあり、通常の選考よりも接点が少なかったという認識があったので、配属希望調査の前に、各事業部の事業部長にも協力してもらい、配属がある部署の説明会を実施しました。ある意味、社内の人たちからするとプレゼン大会ですね。「こんな部署です」「こんなことやっています」「こんな目標を持ってやっています」、「どうですか、ここで働いてみたくないですか」みたいな。
阪
「ぜひうちにきてください」という感じでしょうか。
彦田 彦田
はい、「ぜひうちにきてください」というのをやったので、今までイメージしきれていなかった部分もより鮮明にイメージできましたので、「こういう職種も面白いですね」と言って選んでいただくことができたかなと思います。ミスマッチは少しずつそういうのを使って減らしていけると思います。

キャリアは「伝える」のか「考えさせる」のか

阪
学生さんからすると、例年よりもインターンシップでの事業理解も少し足りなくなっているのかなと思いますし、「先輩社員とざっくばらんに座談会できます」と言っても、WEBだとなかなか質問しづらいっていうケースもあるかと思います。キャリアをどう認知させているか、考えさせているか、お二人にお伺いできればと思います。キャリアってどう伝えていらっしゃいますか。「伝える」ですか。「考えさせる」ですか。
彦田 彦田
伝える部分と考えてもらわなければいけない部分があるので、人事部門としては、「キャリアは会社が準備するのではなくて、自分で築き上げていく、自分で勝ち取っていくんだよ」と言っています。ただ、キャリアを描こうにも知らないとなかなか難しいので、先輩社員との接点を、いろんなところで持ち続けています。スーツを着て、なかなか質問しづらいというような場面もあるかとは思うので、たとえば、オンライン飲み会って一時期流行ったと思うのですが、そういう方法で少人数のグループに、一人必ず先輩社員が付いて、お酒飲みながら聞けるようなことを工夫しています。
阪
ありがとうございます。ファーストリテイリングさんはいかがですか。
森山 森山
そうですね。キャリア、とくにお店でどのような働き方ができるのかは、今までも説明会でお伝えしてきてはいるものの、やはり「イメージができない」という声は絶えないので、今までは口で伝えているだけだったものを、キャリアセッションや海外でも活躍している、実際の店長のインタビュー動画など、イメージがきちんと湧くようなコンテンツも盛り込んでいますいこうと準備しています。

「考えさせる」という意味では、結局「どこで働きたい」、「どんな職種で働きたい」を学生さんは考えていらっしゃるのですが、「なぜ働くのだろうか」、「仕事を通じて自分はどう成長したいのか」というようなことに向き合わせないと、学生さんの就職活動って、おそらくうまくいかないのではないかと思っています。ファーストリテイリングということを取っ払って、「何を優先したいのか」、「何に価値を置くのか」ということをまずはきちんと考えてください、と伝えるようにしています。

ただ、店舗や、工場もそうだと思うのですが、なかなか払拭できないネガティブイメージみたいなこともすごくあると思うので、逆に教えてほしいなと思っています。
彦田 彦田
そうですね。工場のイメージは学生からするとやはり作業者というイメージがどうしても拭えないです。それもあって必ず工場見学を実施していたんですよね。実際に工場で働いている人たちって、実はたとえば、帽子の色でLIXILの社員と協力会社さんという風に分けているのですが、現場で働いている人のほとんどが協力会社さんだというのが、実は目に見えてわかってくるんですよね。そういったところで理解してもらうのと、そういう人たちと一緒になって、自分が、ある意味そのラインを任された責任者としてどう運営していくのか、また工場長の右腕になって、1年目から仕事するというのを、工場長からしっかりメッセージを伝えてもらっています。

先輩社員にもきてもらって、「最初、工場配属って聞いたとき、どうでした?」「嫌でした」とだいたい皆さん言われますので、そこに対して、「そのモチベーションが下がった中で、どういうふうにマインドが変わっていったのですか?」というのを、正直に話していただいています。

また、学生には必ず、考えたことも言葉に出してもらい、「自分がこの工場にきたと思ったときに改善できるとこって何かありましたか?」 と聞いて、「こういうのが危ないと思いました」、「もうちょっと綺麗にしたほうがいいと思います」、というのが出てきたりするので、そういう当事者意識を持って、「でもこういうのを見つけて働いていくのだな」というのをわかりやすく伝えていくようにはしています。
阪
視聴者から「店舗や現場志向はないがすごく優秀な人を採るのか、現場志向がないのであればそういう人は採らないのか、どっちを究極の選択として採用しますか? 」と質問がきていますが、いかがですか?
森山 森山
そうですね。もちろん理解してもらえるように伝えます。すごく難しいのですが、会社としてどっちの答えかは置いておいて(笑)、個人的にはこれは絶対外せないなと思っているのが、店舗志向かどうかというよりも、その学生の本質的な志向性が、我々の理念や価値観と、きちんとマッチしているかが一番大事ですね。

もしかしたら店舗の仕事理解は後々、醸成されていくかもしれないですが、優秀だが、世の中への貢献意欲が薄いということであれば、間違いなく×と思っています。店舗志向じゃないかもしれないですけど、まだまだ成長の余地があって、ちゃんとこの子だったら世の中のために頑張れる、我々と一緒に頑張っていけるという子のほうをやはり採りたいなと思っています。
阪
お二方のお話から、「リアルをいかに伝えるか」ということと、「面談を繰り返して、いろんな人の話に触れさせる」ということがすごく大事なのかなと、思いました。就業環境についてもリアルにお伝えされていますが、こういう場所で、工場のシフトや条件についても説明されていますか?
彦田 彦田
はい、しています。今回、オンラインになって、私たちと応募してきた学生は接する機会が、ほとんどないのですが、工場で働いている人は在宅、リモートワークじゃないですよね。でも、リモートワークというイメージしか伝わっていかないので。それは、すごく難しいなっていうふうに思いました。ですので、先輩社員からも、「どういう働き方しているのか」というのは必ず伝えてもらうようにしています。

オンラインでの見極め・選考について

阪
続いて、「面接でどう見ていくのか」、見極めでどういった工夫をされていらっしゃいますか? 意識されているポイントや、オンライン化で変わったことはありますか?
彦田 彦田
LIXILは、必ず1対1の面接を一次、二次、最終というかたちで行うようにしていました。なので、その人がどういう人なのかを必ず3回見ていました。オンラインになっても変わらないですよね。ただ、第一印象に左右されることはすごく減りました。本当に、論理的思考ができる方なのか、自分が投げ掛ける質問でストーリー立ててしっかり聞き取っていって、その方がどういう方なのか、どういう思いを持っているのか、というのが見られるようになったので、もしかしたら、対面よりもオンラインのほうが、客観的に判断できるのではないかな、とは言っていました。
阪
ファーストリテイリングさん、オンラインで面接されていていかがですか?
森山 森山
そうですね。やはりオンラインになって、特に見極めるポイントが変わったというわけではなく、表情や対人能力みたいなところは読み取りにくくなったと思っています。そこで、面接のフローを大きく変えたというわけではないですが、一つは、一方的なインプットをさせるのではなくて、考えさせてアウトプットさせる、というような機会を設けています。その人が本当に理解して、自分の言葉で腹落ちさせているのか、を見たりしています。

そのあとに、一人ひとりどこが引っかかっているのか、どういう人と話せばもっと理解が進むのかなど、次の面接に行く前にもう1回人事がキャッチアップして、懸念点も見ていきながら、最終の面接に進むまできちんと準備をさせていくことを心掛けています。

あとは選考フロー中に、試行錯誤しながらではありますが、適性検査やAIも使いながら、たとえば入社後に本当にどういうふうな人が活躍をしているのか、採用時の評価が入社したあとの現場の評価であったり、その後のキャリアで整合性が本当にあるのか、みたいなことを見ながら、オンラインの中でも見極めをできるように強化しています。
阪
一つ目におっしゃっていた、面談は、面接と面接の間に挟むようなかたちでプロセスとして追加されたのですか?
森山 森山
そうですね。面接と面接の間に。人事だけではなく、その人がやりたいと思っている将来像や仕事で活躍している社員との面談も、内定を出す前の段階までにやっておくということを今は意識してやりたいなと思っています。
阪
面接と言えば、どうしても、早く次のステップに進めて、何とか内定まで持ち込みたい。内定までの一次面接から役員面接までの期間を、いかに短縮できるかというところに、気持ちが向きがちですがが、あえてそこにワンクッション置くということが、学生さんにとってはいい機会になるのかなと思いました。
森山 森山
こちらとしては大変ですけど(笑)。
説明会をオンデマンド化して、そこは工数削減したり、面接も全部オンラインになったことで、準備の工数も違ってきたりしているので、その辺の効率化は合わせてやりながらも、大事なフェーズでは人員を投下できるように設計する、このバランスが大事かと思います。

内定者への帰属意識の持たせ方

阪
対面で接点を持っていないがゆえに、内々定後の辞退が増えているという企業様もいらっしゃったり、内定式を掛け持ちしていたり、内定式に参加したけどまだ就活しています、という学生さんも、いらっしゃると思っています。内定後の会社の帰属意識を作るために、フォローとして何か新たに取り組まれたことはありますか?
彦田 彦田
実際には内定式であれば、例年、本社にきていただきますが、オンラインに変更になり、最寄りの駅から本社まで通う様子の動画を作りました。実際に今日、始まる前に駅から歩いていって会場に行ってというイメージが湧く動画を作って、内定式が始まる、というようにしました。また、今まで内定式は人事だけで実施していましたが、今回初めて、事業部のトップの方たちにもご協力いただいて、内定式で迎え入れていますよ、感を出しました。事業部のトップの方たちが出てきたことで、すごくよかった、と内定者が言っていましたね。

阪
面白いですね。社員として迎え入れてもらう準備を会社がしてくれているっていうところですね。同期とのつながりはいかがですか。
彦田 彦田
懇親会については、すごく悩みながらオンラインでやりました。アンケートで感想を聞いたところ、すごく盛り上がっているグループと、「いやぁ、苦しかったです、15分」みたいなコメント書いているグループがあって、思うように合わないこともありましたね。 逆にどうでしたか?
森山 森山
そうですね。私たちも、懇親会でいうと、確かにあまりうまくいっていなくて、全体でやるというよりかは、各リクルーターと言いますか、各人事担当が、20人とか30人とか自分の担当を持っているので、その人たちを集めて懇親させるようなことをして、何とか場をつないでいくというか、お互いの顔を見せながら、同期を作る、ということにまだ留まっています。
阪
お酒の場でざっくばらんに、小さいグループになってそれぞれお話をしたり、連絡先交換して会える距離の方たちとLINEのグループを作ったり、実は内定者の方々が勝手に会っている、といったことができなくなっているのが、学生さんとってはすごく残念ではありますよね。
森山 森山
そういうのが好きな人と、そうでない人で、好きでない人や積極的でない方は、人事主催でもっとやってほしいといった要望が多いと思います。
阪
同期も含めて、会社に入社する仲間をつなげてあげるっていうことは、もしかしたらもう少し課題感としてはあるのかもしれないですね。ありがとうございます。
彦田 彦田
よかったと思ったのがもう1つありまして。スポンサーをやっているスポーツ選手の方たちからメッセージもらったのはよかったですね。タイミングが合ったので。それで、スポンサー担当している方を通して、内定者向けにメッセージをもらいました。
森山 森山
社内向けにはメッセージをくれているので、ああいうのを学生向けに、出せると引きになるのだと思いますね。
彦田 彦田
ものすごい引きになりました。内定式でやったのでよかったなと思いますね。
阪
会社の一員になるという意識が作り上がって、いいですね。ありがとうございます。それでは、最後にメッセージをお願いできればと思います。それでは、彦田様からお願いいたします。
彦田 彦田
はい。私がそんなに言えることではないのですけが、今まで当たり前に行っていた対面での選考から、このコロナで、劇的に変えなければいけない状況になったかと思います。試行錯誤されて、いろいろ皆さんやられているとは思うのですけが、私ども、試行錯誤しながら、企業としてしっかり価値が出せるように、また、学生に不利益が起きないように、ギャップをいかに埋めるのかというのを各社様、私ども、努めていきたいというふうに思っておりますので、いい日本の採用ができていけばなというふうに思っております。
阪
ありがとうございます。では森山様、お願いします。
森山 森山
はい。私もまだまだ、採用の領域では修業の身ですので、今後もっとよくしていきたいなと思っているところなのですが、ファーストリテイリングとしましても、世の中にとっても学生にとってもよい採用活動を行えるように目指してやっていきたいと思っておりますので、是非今後も、皆様とも、何かあれば繋がりながら課題を解決していければと思います。また、私たち人事って、採用するということにすごく着目してしまい、もちろん会社の利益になるように、ということは考えるのですが、一方で、こういったコロナの中で学生さんもすごく不安を持っていたり、先行きが見えない中で焦ってしまったり、自分の人生や働くことについてなかなか向き合えないまま、仕事、働く場だけを探してしまうみたいな、傾向にやはり陥りがちなんじゃないかなと思っています。そこで、ぜひ何か私たち人事や採用の観点から、もう少し彼らの人生が有意義になれるような就職活動、採用活動が提供できるような仕組みや価値を提供できればすごくいいかなと思っていますので、一緒に頑張れればと思います。今日はありがとうございました。
阪
ありがとうございました。彦田様、森山様、改めましてありがとうございました。